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気付きの言葉COLUMM

壁を破る

 ゴールデンウィークはどこにも行かず、押し入れの大掃除などをした。そこで45年ほど前に買ったある本を見つけた。若いころ、この本をむさぶりつくように読んだものだと懐かしく思った。

 それは、日本を代表するコンサルティング会社の創業者として名高い、タナベ経営の田辺昇一氏の本だ(ダイヤモンド社発行、人間の魅力)。氏が震災後神戸で講演をされたときに、この本を含めて3冊にサインをして戴いた思い出深い本だ。

 その中から少し抜粋すると、

『薄い壁、厚い壁、いくたびか壁にぶちあたった。ときには半年、ときには5年。壁だとわかって苦悩することがあった。壁がどうしても破れない。逃げてしまえばすべては終わりだ。同じ姿勢を続けている限り壁は破れまい。何かが不足しているのだ。仕事から離れて考え抜くことである。欠けているものに気がつけば、楽々と壁は破れる。壁を破るだけの実力が身についたからだ。厚い壁にぶちあたれば、大飛躍の機会到来と思えばよい。』

 また別の章では、こうも記されている。

『私は、経営の苦しい会社の相談にあずかるとき、いつも「今が最悪だ、といえる間は最悪ではない」といって励ます。「これがドン底だ」と思えれば、かえって気楽だ。これ以上悪くなることはないはずだからだ。

 そういうとき、自分のプラス要因を数え上げる。深夜一人悩んでジッと手を見る。「そうか、この丈夫なからだがあるではないか」と考える。

 健康なからだ、能力、愛情豊かな奥さん、すべてがプラス要因ではないか。自分の性格の長所、能力の長所をもう一度総点検することだ。

 仕事の壁でも同じだ。ギリギリの状態に追い込まれたとき「なんとしてでも成功させなければ」という執念をもつと、窮すれば通ずで、必ずよい知恵が出る。知恵が出ないのは、執念が足りないからだ。壁は避けてはならない。飛躍して乗り越えなければ、進歩も成長もない。』

 いかがだろうか、まるで今の経済状況にぴったりの指摘ではなかろうか。壁にあたってご苦労をされている方が多いと思う。しかしこれがドン底だと思えればかえって気楽だとは、流石に超一流のコンサルタントらしい指摘だ。

 田辺昇一氏は同郷の生まれで、高校の先生から「お前たちの先輩にこんなすばらしい人がいるよ。お前たちも頑張れ!」と常々聞かされていたので、いつかはお会いしたいと思っていた。税理士を目指したのも、アベ経営という法人名にしたのも、氏へのあこがれによるところが大きい。何十年来の想いが、皮肉にも阪神淡路大震災があって、その激励のために、神戸で講演会があり、直接お話をする機会に恵まれた。

 そういえば、神戸の人は、あの大震災も乗り越えて来たではないか。今思えば大きな壁だったはずだが、諦めなければ、そのうち時間が解決をしてくれるではないか。

 今出来ることは何かを徹底的に考えよう。そして、この機会に仕事の大幅な見直しをしよう。コロナはもう少しで収束する。その後にスタートダッシュをして遅れを取り戻そう。そのためには今何を準備しておけばいいのか徹底的に考えたい。

 たとえば社員の多能工化をしておこう。マニュアルを作っておこう。その人にしか出来ない仕事を作らない。お互い忙しい部門が生じたときに応援できる仕組みを作っておけば、1.5倍に受注が増えても対応出来る。今5人いる社員が欠けても、3人でも仕事が回せるようになる。『執念をもつと、窮すれば通ず』この言葉を信じて、頑張りたいものだ。

 

 

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税理士・中小企業診断士 安部 春之