tel

気付きの言葉COLUMM

人生の方程式

 初めて会った人でも何分か話すうちに分かることがある。この人はまず相手のことを先に考える性格か、自分のことばかり考える性格かだ。相手のことを先に考えられる性格の人は感謝の気持ちも多く持ち合わせていることも体験的に知っている。特に多くの人に会っている経営者なら、一瞬にして気付くのではなかろうか。

 

 そして相手のことを先に考えられる性格の人の周りにはそういう人ばかり集まっているように思う。反対に自分のことしか考えられない性格の人の周りにはそんな人が多く集まっているように思う。あるいはそんな人と付き合うには、どうしてもそんな態度にならざるを得ないのかもしれない。そして徐々に遠ざかって行く。

 

 私どもの事務所でもたまに面識のない銀行員が挨拶回りに来て、融資先を紹介して欲しいと頼んで帰ることがある。こちらのことは殆どふれないまま帰っていく。そう多くはないが、こんな人はいくら営業に行っても、苦労するだろうなと同情をしてしまう。私も偉そうには言えないが、多分そうであろうことは分かる。

 

 京セラの稲盛会長は、「考え方を変えなさい」とよく言われる。日本航空を再建したときも、幹部教育で、「人間として何が正しいのか」という判断基準、つまり人生の方程式からスタートした。人生の方程式とは、考え方×熱意×能力で、熱意や能力は+0点から+100点まであるが、考え方は-100点から+100点まである。考え方が間違っていたら、いくら能力があっても仕事の成果は得られないと。

 

 同氏の「生き方」という本を読まれた方も多いと思う。世界中で1千万部も売れ、特に中国で半数近くが売れるほど人気のある本で私のお勧めの一冊だが、この度、新たに「考え方」という本を上梓された。(大和書房、29年4月刊行)私も早速買って読んでみたが、プラスの考え方、マイナスの考え方のことが詳しく書かれていて非常に分かりやすい。

 

 その中のひとつに「利己的な判断ではなく、利他の心で判断をする」という項目がある。それについての記述を引用したい。

 

 不平不満を言わず、常に謙虚にして驕らず、生きていることに感謝する。誰にも負けない努力を重ね、自分が犠牲を払ってでも世のため人のために尽くそうとする。そうした「他に善かれかし」という優しい思いやりに満ちた、美しい「利他の心」が、じつは自分自身の人生をもよくしていきます。そんな利他行を積んでいくことは一見、回り道のように見えます。ですが、「情けは人のためならず」と言われるように、優しい思いやりに満ちた心、行動は、相手に善きことをもたらすのみならず、必ず自分に返ってくるものです。それは、水の流れにたとえて考えると分かりやすいと思います。たとえば、相手と自分の間にたらいがあって、水が張ってあるとします。そのたらいの水を相手のほうへ押しやれば、たらいのなかで大きく波打って、結局は自分のほうへ戻ってきます。それと同じで、人を大事にして、人を喜ばせることをしていれば、おのずと自分のほうへ戻ってくる。世の中とはそういうものではないでしょうか。

 

 それは、「自分がしてあげたのだから、相手にも自分に何かして欲しい」というような話ではありません。相手に何かをしてあげて、それで相手が喜んでくれた。それ自体で清々しい気持ちになるでしょうし、あなたの誇りにもなるはずです。「相手が喜んでくれた」「相手の役に立つことができた」ということを、自分の最上の喜びとする。そういう精神の水準に到達できたとき、人間としての本当の幸せを感じることができるはずです。(同書より)。

 

 相手からの見返りを期待してはいけない、それが利他行だということがよく分かりました。

 

 

税理士・中小企業診断士 安部 春之