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気付きの言葉COLUMM

予期しない顧客からの要望を聞く

 環境変化の度合いが激しいので、脅威に感じるかもしれない。変化が無くなって欲しいと考えてしまいがちだ。ある方にその対処法を聞いた。変化はコントロール出来ない。変化が激しい時代に出来ることはただ一つ。その先頭に立つことだけだと。変化は自然現象ではない。誰かが起こしている。人間がしている。そして変化の先頭に立つためには変化を見極める必要がある。事業機会として捉える必要がある。変化が激しいということは、チャンスが生まれて来ている時代で、いくらでも貢献できるということだ。力をどう高めるかが問われている。

 

 そのためには顧客の声によく耳を傾ける必要がある。特に予期しない、顧客からの要望を聞くことが大切だ。

 

 会計事務所に対して、コンピュータを納入する仕事をしている方がいた。ある日会計事務所を訪問すると、税理士に言われた。「実は今日は機械の話ではないが、相談がある。」「当社のお客さんで、非常に業績の良い会社があるが、残念ながら後継者がいない。あなたは色んな会計事務所を訪問しているから、どこかこの会社を引き受けてくれるところを探してきてくれないか?」行く先々で何度かこのような話を聞いたので、その方は自ら中小企業専門のM&Aの会社を立ち上げた。今はこの会社は上場をしている。私はこの会社設立前からこの方と親しいが、ここまで伸びるとは正直思わなかった。

 

 また、最近美容室といえば、男性も行くことが多い。女性が髪を奇麗にして貰っている隣で、男性がいたら、嫌だという顧客の声に答えた美容室がある。そこの会社は社長が男性のため、営業時間中は社長ですら店には出ないことを徹底し業績を伸ばしている。日本でも一、二を誇る生産性を維持しているそうだ。

 

 マネジメントの父ドラッカーの「イノベーションと企業家精神」という本に次の記述がある。 「具体的には、イノベーションの機会は七つある。最初の四つは、企業や公的機関の組織の内部、あるいは産業や社会的部門の内部の事象である。したがって、内部にいる人たちにはよく見えるものである。それらは表面的な事象にすぎない。しかし、すでに起こった変化や、たやすく起こすことのできる変化の存在を示す事象である。まず第一が予期せぬことの生起である。予期せぬ成功、予期せぬ失敗、予期せぬ出来事である。第二がギャップの存在である。現実にあるものと、かくあるべきものとのギャップである。第三がニーズの存在である。第四が産業構造の変化である。

 

 残りの三つの機会は、企業や産業の外部における事象である。すなわち、第五が人口構造の変化である。第六が認識の変化、すなわちものの見方、感じ方、考え方の変化である。第七が新しい知識の出現である。~中略~

 

 ただし、これら七つの機会の順番には意味がある。信頼性と確実性の大きい順に並べてある。一般に信じられていることとは逆に、発明発見、特に科学上の新知識は、イノベーションの機会として、信頼性が高いわけでも成功の確率が大きいわけでもない。新知識に基づくイノベーションは目立ち重要ではあっても、信頼性は低く成果は予測しがたい。

 

 これに対し、日常業務における予期せぬ成功や予期せぬ失敗のような、不測のものについての平凡で目立たない分析がもたらすイノベーションのほうが、失敗のリスクや不確実性ははるかに小さい。またそのほとんどは成否は別として、事業の開始から成果の生まれるまでのリードタイムがきわめて短い。」

 

 予期せぬ顧客の要望に事業のチャンスが隠れている。経営者は現場の顧客に会いに行こう。

 

 私も、できるだけ出向くようにします。

 

税理士・中小企業診断士 安部 春之