《日 時》 平成20年9月29日(月)
《講 師》 石原社労士事務所  石原 利男 先生
《テーマ》

−新たな退職金準備制度−

適年が終わるにあたっての移行方法

1.税制適格退職年金(適年)とは?

税制適格退職年金(適年)制度が、平成24年3月31日をもって廃止になります。それまでに他の企業年金制度へ移行、または制度自体を廃止しなければなりません。

 適年の掛金は全額損金処理扱いができ、加入が簡単なため、平成5年のピーク時には92,467社の加入がありました。平成14年4月からは新規加入ができなくなり、平成20年3月末では、ピーク時の三分の一ほどの32,825社になっています。

 積立の年金原資を下記2.)の企業年金に移行する際には、税制上優遇され、税金はかかりません。一方、制度自体の廃止では、解約返戻金が個人に一時所得として課税され、退職所得と比べると税金が多くかかってきます。



2.移行可能な4つの企業年金
1.)確定拠出年金(DC)
平成14年4月より実施され、企業型と個人型がある。採用している企業は多い。
〈長所〉
・掛金の追加負担がなく、退職給付債務の計上が不要
・費用や掛金が安定している
〈短所〉
・従業員が運用リスクを負う
・会社負担で投資家教育を継続的に行う必要がある
・原則60歳まで中途引出ができない
・厚生労働大臣の事前承認(認可)必要

2.)確定給付企業年金(DB)
平成14年4月より実施、基金型と規約型がある。
〈長所〉
・適年と同様の確定給付型のため、労使の合意が得やすい
〈短所〉
・適年と同様で、運用利回りが確保できないと、差額分は会社負担となり、運用リスクを負う。退職給付債務の計上が必要
・毎年度積立水準の検証、掛金の見直し必要
・厚生労働大臣の事前承認(認可)必要

3.)厚生年金基金
単独型、連合型、総合型がある。
〈長所〉
・確定給付型のため、2.)と同様に労使の合意が得やすい
・代行部分保有でのスケールメリットがある
〈短所〉
・新設の場合は手続きが非常に煩雑。元々加入していない限り、移行は厳しい。

4.)中小企業退職金共済(中退共)
昭和34年より実施。中小企業のみの加入。適年から中退共に移行できるのは新たに加入する場合のみであり、以前から加入している場合は移行できない。
〈長所〉
・掛金の追加負担がない。退職給付債務の計上が不要
・費用や掛金が安定、一定利率による給付が確保され、将来の支給額を把握できる
〈短所〉
・原則として60歳までは一時金払い
・退職金の内枠として利用する場合が多い



3.移行にあたっての問題点

1.)既得権の保護
移行時点での自己都合退職による退職金額は保証する。保証できないならば大きな問題になる。

2.)積立不足の解消
移行時までの積立不足分は会社が補てんしなければならない。

3.)従業員の同意
就業規則の変更は、不利益変更のことが多く、後々に問題が起きないように、全従業員の同意書をもらっておくべきである。

4.)就業規則・退職金規定・退職年金規定等の改定
制度を廃止した後でも、規則・規定等を変更していなければ、改定前の制度自体は生きていることになる。


4.退職金制度の見直し

 企業年金以外にも、退職一時金として一般的に、退職時の基本給をベースに勤続年数等を考慮した基本給連動型や、近年ではその修正として、ポイントによる制度もあります。退職金の制度設計は、会社の内容に応じてどうすればよいのか話し合いを重ね、時間をかけて取り組む必要があります。


石原先生にはパート労働法、派遣法、年金特別便といった最近の話題についてもお話いただきました。
K・T
 
 
ホーム