《日 時》 平成22年6月22日(火)
《講 師》 阪南大学前学長 大槻 眞一 氏
《テーマ》

−産学連携をするにはどうするか−

関西経済の動向と中小企業の対応策

1.はじめに

 ギリシャの財政危機が発端となって、2009年12月ユーロは値下がり、EU経済の混乱が始まった。ユーロ安は日本企業の輸出採算の悪化にもつながった。
 アメリカでは、2010年1月オバマ大統領が一般教書演説で、競争相手は中国・インド・ドイツだと述べた。数学と科学に重点的投資をしている国々である。
 インド・中国は市場が大きく、毎年8%以上の経済成長を持続している。アメリカの有名大学等への留学者が多く、近年では、自国の政府がアメリカと同様の生活環境を用意することで、卒業後、国内に戻るものが増えた。このことは技術力、知識量の上昇につながった。一方で、EU経済の落ち込みは、中国経済にも影響を及ぼし、国内では賃金格差や土地バブルといった問題が存在する。




2.中小企業は経済のバックボーン

 日本では近年、中小企業の倒産・廃業が多いが、アメリカやEUではそれほどでもない。日本国内の大企業は海外進出するが、外国の製造業は日本にやって来ず、国内の産業が空洞化していること、またGDPは20年間横ばいで、世帯当たりの可処分所得も伸び悩んでいることが理由として挙げられる。購買力の低下が、デフレスパイラルを導いている。
 中小企業は、国際競争力の源泉と言える。トヨタ自動車の2、3万点にも及ぶ個々の部品が代表例である。1980年代、日本は"Japan as 1"と称された。アメリカは日本の経営のやり方を徹底的に研究した結果、技術に優れ、品質も良い中小企業の強さに気付き、中小企業の育成に乗り出した。
 また、EUでも2000年「小企業憲章」の書き出しに「中小企業はEU経済のバックボーンである」と記されている。
 新しい技術や新しいサービスは、中小企業から生み出されており、社会進出と国民生活を豊かにする大きな役割を持っている。日本の雇用の70%以上は中小企業であり、雇用の受け皿となっている。地域に密着しており、地域振興の要である中小企業が発展することで、地域経済は活気を帯びる。地域経済が回復してこそ日本全体の経済も回復するのだ。




3.中小企業の今後

 2010年6月、政府の新成長戦略が閣議決定され、7つの戦略が発表された。
@環境・エネルギーAライフイノベーションBアジア戦略C科学・情報化の推進D観光産業・地域の活性化E雇用対策F金融対策
 国際競争力を高めるため、M&A、ベンチャー企業の買取り、中小企業との共同研究といったオープンイノベーションも注目されている。
 また、中小企業憲章も同日に閣議決定され、基本原則は以下のとおりである。
1.経済活力の源泉である中小企業が、その力を思う存分に発揮できるよう支援する
2.起業を増やす
3.創意工夫で、新しい市場を切り拓く中小企業の挑戦を促す
4.公正な市場環境を整える
5.セーフティネットを整備し、中小企業の安心を確保する



4.進化する中小企業支援

 最近では、商工会議所や大学の中小企業支援相談窓口のアドバイザーが窓口での相談だけでなく、中小企業の各事務所に出向くこともある。
 例えば、大阪府立大学では、大阪市立大学と共同オフィス(大阪府同友会)を設立し、会員限定でホームドクター制を始めている。
 また、神戸大学では、神戸大学支援合同会社を設立、企業への直接訪問を繰り返し、ニーズに合う先生を探してマッチングを行う。その後も毎月訪問により連携の経緯をみている。



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