《日 時》 平成22年11月19日(金)
《講 師》 ベトナム総領事館領事 カオ アイン ジュン博士(経済学)
《テーマ》

−発展めざましいベトナム経済−

ベトナム経済の現状と中小企業の進出法



 2010年3月時点で、ベトナムにある日本企業は全体で894社、日本人の数は約1万人にのぼります。
 ベトナムの魅力と課題を通して、中小企業のベトナム進出法をお話しいただきました。



1.ベトナムの魅力

 ベトナムは、東南アジアの中で政治体制を含め最も安定している国です。民族の9割はキン族で、宗教では仏教が80%を占めています。このため、内戦や民族・宗教の衝突がありません。
 ベトナム人は一般的に、勤勉・真面目・手先が器用と評価されます。2010年4月時点で、総人口のうち約66%が労働者で、毎年約150万人が労働市場に加わっています。労働者の構成は、15歳−39歳が約42%、40代が約14%、50代が約9%と若い世代が多いのが特徴です。識字率も90.3%あります。留学生や研修生が増え、架け橋としての役割も大きくなっています。ベトナムには良質、安価で豊富な労働力が存在します。
 ベトナムは日本と良好な関係にあり、政府間の緊密関係や民間レベルの交流もあります。また、日本企業のベトナム進出数は上昇しており、ハノイ・ホーチミン市と日本の成田・関空・名古屋・福岡に繋がる直行便は毎日運航しています。
 ベトナムは、世界13番目の人口大国であり、総人口の7割が30歳以下です。高い経済成長は持続的で、ベトナム市場の成長が今後も期待できます。また、ベトナムでは投資優遇政策もあります。




2.ベトナムの課題

 電力、水道、通信などのインフラが整備されている大都市部の工業団地では、入居希望の企業が多く、賃貸料が高いのが現状です。一方、地方の工業団地では、賃貸料は安いのですが、電力などの供給は不安定です。ほかに物流インフラの整備も遅れています。
 2009年のJETROの調査によると、製造業の現地調達率は24%と低く、原材料・部品の輸入、製品加工が圧倒的でした。裾野産業は未発達の状態です。また、中間管理者の確保の困難や法制度にも問題が残ります。




3.日系企業進出の状況

 日系企業の多くは工業団地に入居しており、工業団地はベトナム全体で187ヶ所(南部108ヵ所、北部52ヵ所、中部27ヵ所)あります。日系の工業団地は、現在、北部に2ヵ所、南部に3ヵ所あります。裾野産業育成のため、2010年にバックニン省クエボ県のリース工業団地2ヵ所で起工式を行い、リース工場を1,000uで造成、1u当たり3米ドルで日系企業に貸出ししています。
 日系企業の進出業種としては、輸出加工型の製造業が多く、ソフト開発・IT関係に進出する企業も増加しています。特に、ソフトに関しては中小企業の進出が急増しています。他にもエアコン空調ダクト・メンテナンス、会計事務所、歯科治療、学習塾、通関・内陸輸送、通訳・配車サービスなどの業種に進出している企業もあります。企業の多くは、家賃の高い都市部にあるオフィスビルには入らず、都市周辺または、住宅を一軒借りて事務所として利用しています。



4.今後の可能性

 今後も機械・電気・電子などの労働集約型・輸出加工型製造業への進出は継続され、特にソフト・IT関連分野への進出が注目されます。
 ベトナムへ進出する際には、進出の目的とその形態の明確化が重要となります。目的には、コストダウン、優秀な技術者・技能者・社員の確保、資源活用、本社の状態打破、取引先の進出、リスクの回避などが考えられますが、目的に見合った事業計画の作成が必要です。関連情報の収集と現地調査も必要です。
 先に述べたベトナムの魅力と課題から見て、ベトナムへの進出は将来性が明るいと思われます。大手企業だけでなく、中小 企業もベトナムへの進出チャンス は十分にあると考えられます。

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