《日 時》 平成23年6月23日(木)
《講 師》 経済産業省近畿経済産業局
通商部国際課長  戸田 美和 氏
《テーマ》

−何故いま必要なのか−

EPA・TPPの推進について

1.はじめに

 政府は、平成22年11月、世界中の主要国と高いレベルの経済連携を進める旨の基本方針を決定した。日本の将来は、人口の減少により食料品・工業品・サービスの国内市場が縮小、地方では産業の空洞化が進むとともに、農業の担い手が確保できなくなるおそれがある。日本人の意識も内向化しており、いろいろな不安が存在する。また、世界における日本の地位は低下傾向にある一方、アジアを中心に世界市場は拡大、特定国・地域間で貿易・投資等を進めるEPA・FTAが急速に広がり、韓国等が先行している現状にある。
 今年3月の震災では、国と国との絆の強化が必要だと実感された。資源・エネルギーの多くを海外に依存している今日では、海外での調達が恒久的となれば、深刻な空洞化を引き起こす可能性があるとの懸念もある。



2.EPA、TPPとは

(1)WTO(世界貿易機関)
 1995年成立、153加盟国・地域で、モノ・サービスの貿易自由化や貿易関連のルール作り(知的財産のルール等)を行っている。 加盟国は他の全加盟国の同種の産品に対して同じ関税率を適用する。一度の自由化で留まらず、自由化交渉を繰り返し実施している。また、紛争処理システムを備えている。

(2)FTA(自由貿易協定)
 一部の国・地域の間だけで、モノ・サービスの貿易をWTOの一般ルールよりも自由化する協定。

(3)EPA(経済連携協定)
 FTAで扱うモノ・サービスに加え、投資の自由化、規制の緩和、制度の調和等、幅広い分野のルールを定め、経済関係を強化する協定。

(4)TPP(環太平洋パートナーシップ協定)
 2006年に発効した環太平洋戦略的経済連携協定の参加国(シンガポール、ニュージーランド、チリ、ブルネイ、米国、豪州、ペルー、ベトナム、マレーシアの計9ヶ国)が交渉中のEPA。今年11月の合意を目指している。 物品の関税については、最終的に、原則全ての関税の撤廃を目標とし、1月以降、具体的な交渉を開始。この他、サービス貿易、政府調達、投資、環境、労働、制度面での調和等についての協定作りが進められている。



3.日本の取り組むべき課題

 地域や企業がアジア等と直接つながることで、誰もがグローバル化の恩恵を享受できる経済社会を目指していく必要がある。そのためには、食と農林漁業の再生を図り、世界で活躍できる人材を育てていく。国家戦略プロジェクトの推進等や海外の活力を呼び込むことで経済活動の場としての日本の魅力を向上させる。
 また、関係国間で投資や規制等についての共通のルール作りをし、貿易・投資の拡大を図るとともに、日本の雇用、技術、所得を守ることも重要である。


4.TPP参加に向けて

 TPPは、国を開き、日本経済を活性化するための起爆剤となりうる。しかしながら、原則10年以内の関税撤廃によるその影響や、関税撤廃分野以外にも、幅広い分野の自由化やルール作りが検討されており、その影響についても注視する必要はある。
 中小企業にとっても新たな市場開拓等に成功すれば、飛躍的に成長できる可能性がある。地域が世界と直接つながることで、観光、外資誘致、農産品輸出により地域が直接外貨を稼ぎ、豊かになるだろう。国内外のモノの動きを円滑にすることで、日本企業が得意とするジャスト・イン・タイムでの生産を広範囲で展開できるようになる。また、通関時のトラブルや税関手続きの負担を軽減することで、中小企業の輸出入の促進にもつながる。
 TPP交渉において、既に合意された事項に後から参加し、修正するのは困難である。そのため、できるだけ早期に参加することが必要であると考えられる。


K・T
 
 
ホーム