《日 時》 平成24年6月27日(水)
《講 師》 安部税理士事務所  副所長 安田佳津子
《テーマ》


中小企業の会計に関する基本要領について

〜適正な会計処理をして金利の減免を受けよう!〜

1.中小企業の会計に関する指針

 信用保証協会が行う「中小企業の会計に関する指針(中小指針)」に基づく信用保証割引制度について、平成24年4月より一部の見直しがありました。
 上記の割引制度とは、中小企業の計算書類が中小指針に準拠して作成されたかを税理士等が確認し、チェックリストを提出した際に、信用保証協会の保証料率0.1%の割引が認められる制度です。この制度の適用は、平成18年4月の創設時には、チェックリストの添付のみで認められ、見直し後の平成19年4月からは、チェックリスト58項目から必然性の高いもの等、信用保証協会が抽出した15項目のうち1項目以上の準拠によって認められてきました。
 この度の見直しでは、保有しない資産の項目については除外されますが、上記15項目の全てが中小指針に準拠していないと、この割引制度を適用できなくなりました。故意・過失を問わずチェックリストの内容に事実と異なる記載があると信用保証協会が判断した場合には、この制度の利用が認められず、また、同一の税理士等から複数回にわたりこのような事態が起こると、その税理士等が確認したチェックリストについては、一年間この制度の適用ができないこととなります。
 上記改正は、平成24年4月1日以降に終了する事業年度の計算書類より適用されます。



2.中小企業の会計に関する基本要領

 多くの中小企業では、経理人員が少なく、高度な会計処理に対応できる十分な能力や経理体制を持っていません。会計情報の開示先は、主として、取引先・金融機関・同族株主・税務当局等に限定されており、また、税務申告が計算書類等作成の目的の大きな割合を占め、法人税法で定める処理を意識した会計処理が行われている場合が多くあります。
 非上場企業である中小企業にとって、上場企業向けの会計ルールは必要ないのですが、中小企業でも簡単に利用できる会計ルールが今までありませんでした。そこで、中小企業の実態に即した新たな会計ルールとして「中小企業の会計に関する基本要領(中小会計要領)」が平成24年2月1日に公表されました。
 「中小会計要領」は、すべての中小企業が利用可能です。「中小指針」は、会計専門家が役員に入っている会計参与設置会社が拠ることが適当とされているように、一定の水準を保った会計処理を示したものです。一方、「中小会計要領」は、「中小指針」に比べて簡便な会計処理をすることが適当と考えられる中小企業が利用することを想定して策定されたものです。税効果会計、組織再編の会計等は盛り込んでいません。



3.優遇措置を受けるためには

 これからは、会社の経営実態が明らかになるようなきちんとした会計処理を行い、その結果として優遇措置を受けられるように決算を組んでいく必要があります。
 例えば、固定資産は相当の減価償却、すなわち100%の減価償却を行うこと、また、賞与引当金として翌期支給の賞与見積額のうち当期負担部分を計上することや、退職金規定・退職金等の支払いに関する合意があり、退職一時金制度を採用している場合には、期末時点の退職給付に係る自己都合要支給額を基に退職給付引当金を計上すること等が必要になってきます。
 中小会計要領は、今後3年間を集中広報、普及期間と位置づけ、中小企業を取り巻く全ての関係者(中小企業団体、税理士、公認会計士、金融機関等)が一丸となって普及・活用を促進していきます。
 活用支援として日本政策金融公庫は、「中小会計要領」に従った計算書類の作成及び期中における資金計画管理等の会計活用を目指す中小企業に対し、優遇金利(基準金利▲0.4%)での貸付制度を創設したり、また、「中小会計要領」を適用している小規模企業に対しては、利率を▲0.2%優遇する措置を設けています。
 その他にも信用保証における保証料率割引制度の見直しが検討されています。



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