《日 時》 平成24年10月25日(水)
《講 師》 石原社労士事務所  石原 利男 氏 
《テーマ》


不払い残業代問題

〜能率の悪い部下にも残業代は払うのか〜

1.はじめに

 不払い残業代は、企業にとっては悩ましい問題です。以前は月30時間の残業代をつけてもいいと言われながら、実際は50〜60時間の残業をするということはよくありましたし、当たり前だと思われており、知識もありませんでした。
 ところが今の働く方は、インターネット等から知識を学んでおり、下手をすればすぐに労働基準監督署から是正勧告を受けてしまいます。したがって、企業側も十分な理解をし、対策を講じていくことが必要となります。



2.労働時間と残業

 労働時間の限度は原則1日8時間、週40時間と決められており、これを超える部分は残業時間です。そして、労働時間が1日6時間を超える場合には45分、8時間を超える場合には1時間の休憩を必ず労働時間の間でとらなければなりません。労働時間を超えて残業する場合には「時間外労働協定書(36協定)」を労働基準監督署に提出しなければなりません。この「36協定」の中で、残業時間の限度は月45時間、年360時間とされています。
 残業をした場合には、労働時間を超えた部分につき、通常の時給の25%増の給料を払わなければなりません。深夜(午後10時〜午前5時)については、さらに25%増、休日については35%増、月60時間を超える残業時間については50%増の給料を支払わなければなりません。月60時間を超える残業は、今のところ中小企業には認められていますが、いつ認められなくなるかわかりません。したがって、月60時間を超える残業については、考えて頂きたいと思います。



3.変形労働時間制

 労働時間が時期によって偏る場合には変形労働時間制を採用することができます。変形労働時間制には主に、1月の変形労働時間制、1年の変形労働時間制があります。
 1月の変形労働時間制の場合には、1月を平均して週40時間の労働時間が限度と決められています。残業時間については、1月45時間、1年360時間が限度とされています。
 1年の変形労働時間制の場合には、1年を平均して週40時間の労働時間が限度とされています。残業時間については、1月42時間、1年320時間が限度とされています。
 週40時間という労働時間の場合、必要な年間休日数を計算すると、1日8時間労働の場合は年間105日、7.5時間の場合には88日、7時間の場合には68日となります。企業は年間カレンダーを作成すると同時に、就業規則において休みについても謳っておかなければなりません。そして必ず最後に「休みが満たない場合には、それを満たす日数を休みとする」という一文を謳っておく必要があります。
 労務管理においては、就業規則に謳っておくということが、大前提となります。



4.不払い残業代問題

@能率の悪い社員に残業代を払うのか?
法律的には払わざるをえません。したがって、その社員に対して会社が責任を持って指導する、与える業務の選択をするといったことしかないと思われます。
Aダラダラ残業は?
そもそも残業とは基本的に上司からの指示のもとに行うものです。自分が勝手にする仕事というのは残業とは認められません。どうしても残業をする場合には、上司の許可を得ることが基本です。したがって、ダラダラ残業は基本的には残業とは認めず、会社としてもその点を指示していくことが必要です。
B名ばかり管理職は?
労働基準法上、管理監督者には残業手当をつける必要はありません。しかし、労働基準法上の管理監督者とは、「経営者と一体的立場(経営に口出しできる)である、時間の束縛を受けない、管理職手当が残業代以上のものである」という要件が必要です。したがって管理職であるからといって、残業代をつけないというのは誤りです。
 重要なことは、時間外労働の時間を減らすよう、過重労働となっている人に対する管理を徹底して行うことだとおっしゃられました。



記事担当 谷口 祐麻
 
 
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