《日 時》 平成25年1月23日(水)
《講 師》 タビオ株式会社 代表取締役会長  越智 直正 氏 
《テーマ》


商いの原点

〜靴下創りに命をかける〜

1.はじめに

 私は、中学卒業後、大阪の靴下問屋「キング靴下鈴鹿商店」に入社し、朝から晩まで靴下のことばかりを考える生活を送りました。
 そして入社13年目の時、あることに反論した際、部下を2人連れて出て行けと言われ、クビになりました。同社を退社後、お金も何もない状態から「ダンソックス」を創業しました。



2.ダンソックス創業時

 創業時は20日締月末現金支払いであったためかなり厳しいものでした。手形はもちろんきれませんし、小切手も廻り小切手しか受けつけてくれないという状況でした。
 また量販店相手の卸売りでは利益にならず、1年間事業を行った結果、残ったお金がわずか50万円であった経験から、自分でモノを作らなければいけないと感じました。しかし自分でモノづくりを始めると瞬く間に借金が膨れ上がりました。
 ですが15歳から靴下一筋でやってきた私には靴下以外何も頼るものもなく、自分には靴下しかないという決意がありました。



3.経営者に必要なもの

 経営者に必要なものは、「こういうことがしたい」という志、夢、理想であり、それを思う力が最も重要です。「こういうことがしたい」と言えなければなりません。将来理想の自分になるためには、その理想を思う力が必要です。思う気持ちがなければ、思い通りの会社になることはできません。志のない人間は、いくら頑張っても舵のない船であり、理想の自分になることはできません。今の経営者に欠けていることは思うことなのです。
 ある方から借金が増えて頭を抱えているという話がありました。しかし借金は信用のバロメーターです。借金は貸す方が返してくれると信用してお金を貸してくれているのです。借りた方が不安を持つというのはおかしなことです。自信を持ったらいいのです。頭を抱えるなんてとんでもないことです。返すんだと思えば返せるものなのです。
 私は33歳の時に借金が7,000万円にもなり、倒産を覚悟しました。当時、お金も売るものも何も持っていなかった私には、儲けて借金を返すしかありませんでした。儲けるには、売れるものを売れるだけ作るしかありませんでしたが、靴下業界においてそれは不可能なことでした。ですが、私はそれをどのようにすればいいかを考え続け、できるようになりました。夢を持ってそうなりたいと思い続ければ、できるようになるのです。
 経営者が勉強しないといけないという状況は反省しないといけないことです。現代において知識は売り買いできるものです。知識、記憶なんてものは、コンピューターの作業なのです。経営者に必要なのは、知識や記憶ではなく、こういうことがしたいという志です。
 また経営者には、夢中になること、素直になることが必要です。夢中になっていたら、食事をとることも忘れて、あっという間に時間が過ぎていたという経験があると思います。これが素直な状態です。このような時間が長い人ほど成功するのではないかと思います。人間はありのままに生きていくのがいいのではないでしょうか。力の限り生きたから、未練などないと思えるぐらい取り組まなければ、事業などできるはずがありません。ベストを尽くして生きなければ経営などできません。経営者が夢中でやらなければ、社員が夢中になることはありません。



4.終わりに

 「人生二度なし、人生は一人に一回限り」です。いつ死ぬかもわかりません。だったら、常にベストを尽くして生きなければいけないと思いませんか。人生に比べれば、商売が儲かるかなんて気楽なことだと思いませんか。自分の人生の方がはるかに難しいと思いませんか。「生きてる間に活かせ命」です。私は靴下に一生の命を施すと決めています。
 
 以上のように、楽しくかつ非常に力が湧いてくるようなお話をしていただきました。
                                          


記事担当 谷口 祐麻
 
 
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