《日 時》 平成26年1月27日(月)
《講 師》 がんこフードサービス株式会社
会長 小嶋淳司 氏 
《テーマ》


経営は人・人・人

食の商いを通じて学んだこと

1.はじめに

 今日、食の偽装問題や農薬混入事件など食の安全・安心が揺らいでいます。根本的な問題はどこにあるのでしょうか。現場経験から判断しますと、「商売人が本当に商売を行っているのか」が問われているのだと思います。


2.商いのきっかけ

 私は、6人兄弟の末っ子で、戦時中に父を亡くしました。当時は物がなく、ほとんどの店が閉じられていく中、母は一人で、どんなところでどのように駆け回って物を集めていたのかわかりませんが、店を続け、家族を養ってくれました。高校2年のときに、母が倒れ、私が店を引き継ぐことになりました。
 商売というのは、どれだけ努力をしても結果が悪ければ、誰も見向きもしてくれません。未経験者であっても、一生懸命考え、お客様に安くて良いものを提供していれば、その結果だけでお客様は評価してくれます。魅力に取りつかれ、どんどん工夫していきました。
 考えても当時は情報も何もない時代、お客様に直接話しを聞いて回りました。「何で私のところに来て下さったのですか?」「なぜ、この商品を買って下さったのですか?」と失礼な質問をし続けました。これを知らない限り、お客様に本当に喜んでいただける店をつくっていくことはできないと、もがく想いで聞き続けたのです。お客様も気持ちが通じれば、どんどん情報を教えて下さいました。
 2年かけて漸く、店の値打ちの基本は、どこよりも良いものをどこよりも安く提供することが原則だということに気がついたのです。

3.商いとは

 お客様が何を望んでいるのか直接お客様と話し、表情やその中身を肌で感じながら、知り続けていくことが商売だと思っています。経営というのは、過去の数値をまとめて、会社の業容の報告を受けたりすることではありません。それはあくまで経営管理であって、経営と管理はまったく乖離しているのです。数値は過去に行った結果であって、それを基に今何をしなければならないかという判断が全て生まれてくるとは思いません。数値があって、経営者としての感覚とお客様からの要求とが一体となって、初めて判断できるのです。
 勘による経営は駄目だとコンサルタントの先生方によく言われてきましたが、私は勘のない経営は駄目だと思っています。現場で自ら決定し、遂行してきた事業が成功したり、失敗したりする経験の中で、自分の理屈で評価できたときに、自分の判断材料になっているのです。勘は、経験のない他人から見ると、第六感が働いているように思われるかもしれませんが、経験則に基づいて実践の中で忠実に自らが真正面から取り組んできたかけがえのないものなのです。
 お客様に今よりもさらに喜んでいただくために、現状から何をしなければならないかの決定は、日々お客様と真剣勝負をしていく中で生まれてくるのです。


4.人を育てる

 知識や技術を教えても、だんだん人は元気がなくなっていきます。指示に対しては忠実に対応できるようになりますが、教えすぎると教えたことしかできなくなるのです。教えない教育をするという結論に至りました。目的や目標、理念はお互いに共有していきますが、実現するために何をしようとは教えません。ヒントも与えないのです。

5.おわりに

 お客様の満足度をより高めるために何をしなければならないか考え続けることが、自分自身の成長に繋がり、次の努力へと繋がっていくのです。  
 人へのこだわりについて、エピソードを交えながら、貴重なお話をしていただきました。


記事担当 保井 良美
 
 
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