《日 時》 平成26年4月23日(水)
《講 師》 株式会社 日本M&Aセンター
大阪支社 情報開発部  副部長 本多 勇馬氏 
《テーマ》


売り手も買い手も社員も皆ハッピー

M&Aは何故これほど効果があるのか

1.はじめに

 経済新聞に、M&Aという文字が出てこない日はありません。中堅中小企業のM&Aは、極秘で行われるため、新聞やニュースになることはありませんが、件数は多いです。以前までは、買収、乗っ取りといったジメッとしたイメージが強かったと思うのですが、今では企業の存続と発展のための経営手法の一つとして注目されています。
2.中小企業の事業承継の実態

 事業承継の方法は、@親族内承継AIPO(株式公開)B廃業CM&A(従業員承継を含む)の4つしかありません。@の場合、会社の内外部から支援される経営者としての器や、会社を発展させることができる経営能力等、経営者となるための必要条件が備わっていない場合があります。そもそも、会社を継ぐ意思や継がせる意思のない場合もあります。国内企業の2/3が後継者不在であると帝国データバンクが発表しています(2011年12月)。Aは狭き門で、上場企業は全体の0.3%に過ぎません。Bは簡単ですが、長年かけて培ったものが全てなくなってしまいます。Cのうち、従業員に承継させる場合、経営能力や経営者としての器は備わっていても、買収資金の調達等個人の資力が問題になってきます。そこで注目されているのが、M&Aなのです。
3.M&Aで得られるメリット

 M&Aはお互いが納得しないと成立しないため、友好的なM&Aになります。以下、成功事例を交えながら、M&Aで得られるメリットについてお伝えしたいと思います。

 ≪成功事例@≫企業を存続させ、従業員と顧客を守ることができた事例
 事業承継問題を抱えていた社長は、「会社のソファで過労死する」が口癖になっていました。廃業することはいつでも出来ますが、残された従業員や取引先はどうなるのでしょうか?中小企業の場合、幹部社員は社長が倒れると廃業になるのかと不安に思われている方が多いです。住宅ローンや子供の進学等でお金のかかる時期です。M&Aでは、従業員の職と所得を確保し、取引先に迷惑をかけずに、社長はハッピーリタイアすることができたのです。

 ≪成功事例A≫業界構造の変化に先駆けて、経営基盤を相互に強化することができた事例  
 製造業を営んでいる社長はまだ53歳でした。技術力は優れていましたが、営業力が乏しく、長期事業計画を立てた場合、10年後20年後今のままでは生き残っていけないということで、M&Aを検討されました。譲渡企業も譲受企業もお互いの短所を補うことにより、会社の更なる発展を遂げることができたのです。社長は「M&Aで会社を売ったつもりはない。M&Aで会社の将来を買ったのだ。」と仰っていました。社長は現在もバリバリ働かれておられます。私は製造業においては今後こういったM&Aが増えてくるのではないかと思っております。
4.M&Aのデメリット
 
 M&Aは、極秘で行われるため、相手を探すのが困難です。すぐに見つかる場合もありますが、長いときは5年以上見つからない場合もあります。また、お互い納得しないと成立しないため、財務、人事労務、法務あらゆる面の問題点を一つずつ解決していきますので、手続きが複雑になります。
 成長過程の企業ほど魅力的で、順調な経営であるほど事業承継は容易にできますので、タイミングは重要になってきます。
5.おわりに

 事業承継は事前準備が特に重要で、「決断」は早ければ早いほど良いです。そして、M&Aを成功させるためには、秘密を守り、お互いを尊重することが必要だと思います。
記事担当 保井 良美
 
 
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