《日 時》 平成14年9月26日(木)
《講 師》 株式会社 アベ経営  税理士 安田佳津子
《テーマ》 〜特定口座に預けていいの?〜
      新証券税制ケ−ススタディ−

 新証券税制のあらまし
 源泉分離課税の廃止により、平成15年以後に株式を売却した場合には、申告分離課税に一本化されます。しかし、個人の株式投資を促し、株式市場に参入しやすくする環境を整えるため申告不要制度や、優遇措置などの新しい証券税制が打ち出されました。期間が限定されている優遇措置も多くありますので、それらを利用していかに税金の負担を軽くするか、それぞれの状況に合わせた制度の利用を検討する必要があります。

 申告分離課税とは
 申告分離課税とは、投資家が株式の売却によって手にした所得とその税額を計算し、税務署に確定申告して納税する方法です。税額は売却額から取得額や売買手数料といった経費を差し引いた額に税率をかけて計算します。なお売却額から取得額を差し引くため、株式の取得額を把握しておかなくてはなりません。

 申告不要制度
 申告不要制度は、売却益のうち一定額を証券会社に源泉徴収してもらい、その後投資家は確定申告によりその徴収税額を精算することも申告書を提出しないことも自由とするという制度です。
 申告不要制度を利用するためには、まず個人投資家は証券会社に専用の特定口座を開設します。その後売却する時までに「特定口座源泉徴収選択届出書」を提出して売却益について源泉徴収されることを選んでおかなくてはなりません。この特定口座を使った株の売買取引の中で売却益が出た場合、証券会社が売却益から所得税を徴収します。ただし住民税は別途納税する必要があります。なお、特定口座は1つの証券会社に1つの口座の設置に限られます。
 優遇措置を利用する時は、確定申告が必要となります。


各種優遇措置の適用
税率引下げ(20%)
1年超所有の軽減税率(10%)
 平成15年〜平成17年の間に1年超所有していた株式を売却すると10%の軽減税率で税金を計算できます。
1年超所有の100万円の特別控除
 平成13年10月1日〜平成17年の間に1年を超えて所有した上場株式等を、証券会社を通じて売却し申告分離課税を選択した場合には、売却益から100万円を控除するという規定です。
上場株式等の譲渡損失の繰越控除(3年間)
 平成15年1月1日以後に生じた上場株式等に係る譲渡損失の金額は、損失が生じた翌年以後3年間、株式等に係る譲渡所得等の金額から控除できます。
取得費の特例
 平成13年9月30日以前に取得した上場株式等を、平成15年〜平成22年の間に売却する場合は、その株式の「取得費」と「平成13年10月1日の時価の80%」のいずれか大きい金額を取得費として譲渡所得を計算できることになりました。
購入価額1000万円までの非課税
 平成13年11月30日〜平成14年12月31日の間に購入した上場株式等を平成17年〜平成19年の間に売却した場合、購入金額ベースで1000万円までに対応する部分の売却益については非課税となります。  

 お分かりのとおり新証券税制はあまりに制度が複雑で、証券会社のセミナーを聞きに来たお年寄りは腹を立てて帰る程だそうです。このままでは逆に投資家の株式離れを招く可能性があるため、簡素化を軸に一部見直しに着手される見通しです。投資家にとって分かりやすく、また使いやすいように改正が実現すれば、より有効な税制になるのではないかと思いました。

M・N