《日 時》 平成19年8月24日(水)
《講 師》 中央財経大学外国語学院  教師 賈 智剛 氏
《テーマ》

−中国の現役大学教師から見た−

中国経済と日本とのエネルギー関係

 1.はじめに

賈先生は、現在北京の中国中央財経大学に勤務されています。同大学は中国の経済関係ではトップの大学です。今回のセミナー内容は、賈先生が大学院時代から現在に至るまで研究し続けているテーマです。

 2. 各国の状況

[中国]

中国では、石油備蓄や石油輸入ルートの多角化などの問題が国家の重要な関心事になっている。輸入量の増加に伴い、石油輸入ルートも複数依存するようになった。将来中国の石油輸入ルートは南・北・西の3つの方角が形成され、海運・陸上パイプラインの輸送方式を主として全部で6大運輸ルートが構築される計画である。
 中国にとって今後のエネルギー発展戦略と、経済発展のための鍵となるのは石油天然ガス産業であり、そのためには国際協力による開発が必要である。
 現在中国の4大国有石油会社が組織の構造改革を通じ、国際競争力の強化を目指して国際株式市場に上場した。中国の石油天然ガス産業は新たに急速な発展の時期に入っている。

[日本]

日本の石油はそのほとんどを輸入に頼っており、ほとんどを中東地域から輸入しているため、充分な石油備蓄と安定した輸入ルートの確保が不可欠である。
 近年備蓄制度の整備を進める中国がこれに学ぶべき点は多い。

[ロシア]

世界的に重要な石油天然ガス生産大国であるロシアは、特に北東アジアの石油天然ガス供給において全局面を左右する影響力を持つ。ロシア国内ではエネルギー供給インフラの整備が重要な政治課題である。

[三国]

中国石油天然ガス産業の国際化の進展、急速に石油天然ガス消費が伸びたことに伴い、中国と日本、ロシアなどとりわけ近隣諸国とのエネルギー産業、市場と安全保障分野において協力をより一層緊密にしていく必要に迫られる。
 ロシアは資源大国であり、日本は資本大国であり、中国は人材大国であり、中日両国は石油の輸入総量が世界で一番多い。よって中日露三国間のエネルギーにおける協力の発展には大きな可能性がある。
 重要なのは同じ石油輸入国として日中両国が地域協力を進め、中東産油国に対する交渉力の強化を図ることである。そのためには日中両国間での石油製品貿易の促進や石油備蓄面での協調、また原油輸入源の多角化などに協同で取り組む必要がある。協力こそ三国のいずれの国に対しても利をもたらすからである。
 

 3. 結論

中国と日本とは千年以上に渡る交流の歴史をもっている。現在、全世界で日増しに地域協力が重視される情勢の下で、共通利益のため日中両国は相互の関係を大きく改善すべきである。エネルギーの経済的かつ安全な供給を保障するという点から見れば、中国・日本・ロシア三国の国際協力はさらに大きな意義をもつ。要するに安全な輸送、安定した価格、信頼性の高い供給、合理的なコストを実現するためには、三国及び北東アジア各国の協力が不可欠だからである。
 現在の段階で中日露三国の石油、天然ガス資源を協同で開発し、域内で使用することには大きな可能性があり、各方面の利益に合致する合理的な選択である。更に広い範囲にわたる地域協力への基礎を築くことになるであろう。

4. おわりに

講演の最後には参加者の方からたくさんの興味深い質問が飛び交い、活気ある講演会となりました。

M・F
 
 
ホーム